【アイシングは股関節、腰、膝の痛みに有効か?その3つのポイント】痛みのしくみ⑩
あなたはどこか痛めたときに、「冷やすと良いよ」と、誰かに言われたことはないでしょうか??
捻挫してしまったときなど、炎症を起こして熱を持っているときに、患部を保冷剤や氷などで冷やしている光景は、よく見かけられます。
このように、患部を冷やすことを、「アイシング」と言います。
アイシングは、怪我をしたときなど、体を損傷したときの急性期の処置として、広く一般的に普及していると思います。
急性期の処置としては、アイシング以外にも、安静、圧迫、挙上が良く知られており、これらを合わせて、「RICE(ライス)処置」や「RICEの法則」と呼ばれています。
この言葉は、安静、アイシング(冷却)、圧迫、挙上の英語の頭文字から作られています。
R:Rest(安静)
I:Icing(冷却)
C:Compression(圧迫)
E:Elevation(挙上)
このRICE処置は、1978年にDr.Gabe Mirkinが提唱したもので、世界的に普及しています。
このRICE処置の目的は何かというと、「炎症を抑えること」なのです。
ここで質問です。RICE処置にも含まれているアイシングは、痛みを治すための正しい行為なのでしょうか??
そして、アイシングは、股関節、腰、膝の長引く痛み治すために、行った方が良いのでしょうか??
1.アイシングのデメリット
記事【炎症による股関節、腰、膝の痛みの基本的な治し方】痛みのしくみ⑨でお話ししていますが、傷めた体を治すためには、炎症という過程が必要です。炎症が起こることによって、傷めたところが治っていくのです。
炎症が起こると、発赤、腫脹、熱感、疼痛という、いわゆる「炎症の4徴候」の症状があらわれます。
このうち、発赤、腫脹、熱感は、患部への血流量が増加するために起こるものです。
これは、体にダメージが加わると、自動的に起こる現象です。私たちが生まれながらに持っている、体の仕組みです。
つまり、患部を治すためには、患部への血流量を増やすことが必要ということです。
ところが、アイシングは、この患部への血流量を、増やすどころか、減らしてしまうのです!
なぜなら、アイシングは、血管を収縮させて、血流を悪くさせてしまうからです。
そして、一度血管が収縮してしまうと、再び拡張するまでに数時間かかってしまう可能性があります。
したがって、アイシングをすると、患部の治癒を大幅に遅らせてしまうことになるのです!
このアイシングによるデメリットについては、様々な研究論文で報告されているようです。
例えば、以下のデメリットが報告されています。
・30分以上の長時間のアイシングによって、神経のダメージが残存した
・アイシングによって神経麻痺を起こしてしまった
・アイシングは筋損傷の回復を遅らせることになる
・アイシングはリンパ液の流れ阻害してしまう
・アイシングによって浮腫の回復が阻害される
・アイシングはアスリートのスピードや持久力などの、パフォーマンス能力を低下させる
そして、1978年に「RICE処置」を提唱したDr.Gabe Mirkinは、2014年にその考えを覆しました。
自身のホームページ「DrMirkin.com」の「Why Ice Delays Recovery」という記事で、「アイシングは治癒を助けるものではなく、遅らせるかもしれない」と述べています。
このように、アイシングには多くのデメリットがあります。
2.股関節、腰、膝の長引く痛みとアイシング
記事【自然治癒力向上と血流改善が痛みを自分で治すために必要な基本の2つ】痛みのしくみ⑥でお話ししていますが、股関節、腰、膝の痛みが長引いてしまう理由の一つが、血流不全です。
血流が悪いと、痛みが長引いてしまうのです。
アイシングは、血流を悪くさせてしまいます。
ですので、股関節、腰、膝の長引く痛みに対してアイシングを行うと、痛みを治すどころか、さらに痛みを長引かせてしまうことになります。
3.アイシングのメリットと注意点
デメリットが多いアイシングですが、全くメリットがないわけではありません。
アイシングには、痛みを和らげる効果があります。
ですので、例えば、傷めたところの痛みがあまりにも強い場合や、体を傷めた選手が至急競技に復帰しないとならない場合などでは、アイシングが役に立ちます。
しかしこれは、炎症反応を抑えたり、神経を麻痺させたりして、痛みを感じにくくさせているだけなのです。
傷めたところを治しているわけではなく、むしろ、傷めたところの治癒を遅らせているのです。
そして、いくつかの研究論文で、アイシングは、20分以上行うと、神経や組織の損傷を引き起こす可能性が高い、運動パフォーマンスの低下を引き起こす、と報告されています。
したがって、痛みを和らげる目的でアイシングをするにしても、その時間は20分までとした方が良いでしょう。
まとめ
傷めたところを治すには、炎症が必要不可欠です。
アイシングは、血流を悪くして、この炎症反応を抑えてしまい、傷めたところの治癒を遅らせてしまいます。
したがって、アイシングは、傷めたところを治すための正しい行為ではありません。誤った行為です。
ただ、アイシングは、痛みを感じにくくさせる効果があります。
しかし、20分以上のアイシングは、体を傷める可能性が高いです。
以上のことから、アイシングは、次のような認識を持っておきましょう。
・アイシングは、基本的には行わない
・痛みがあまりにも強い場合は、20分以内なら行っても良い
・股関節、腰、膝の長引く痛みに対しては、アイシングを行ってはダメ
アイシングは、痛みをごまかすことはできるが、治りを遅らせているのです!
ということで、アイシングは、メリットとデメリットをしっかりと認識したうえで、行うようにしましょう。(^^)/
この記事の内容について詳しく知りたい方は、「Sportsmedicine」という雑誌の2015年6月号の記事、「アイシングの有効性をめぐる文献的考察」をご覧下さい。
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