股関節痛にアイシングして大丈夫?メリット&デメリット
股関節痛で困っているとき、「冷やすと良いよ」と誰かに言われたことはないでしょうか?
捻挫してしまったときなど、炎症を起こして熱を持っているときに、患部を保冷剤や氷などで冷やしている光景は、よく見かけられます。このように、患部を冷やすことを、「アイシング」と言います。
アイシングは、怪我をしたときなど、身体を損傷したときの急性期の処置として、広く一般的に普及していると思います。
急性期の処置としては、アイシング以外にも、安静、圧迫、挙上が良く知られており、これらを合わせて、「RICE(ライス)処置」や「RICEの法則」と呼ばれています。この言葉は、安静、アイシング(冷却)、圧迫、挙上の英語の頭文字から作られています。
R:Rest(安静)
I:Icing(冷却)
C:Compression(圧迫)
E:Elevation(挙上)
このRICE処置は、1978年にDr.Gabe Mirkinが提唱したもので、世界的に普及しています。このRICE処置の目的は何かというと、「炎症を抑えること」なのです。
ここで質問です。RICE処置にも含まれているアイシングは、股関節痛を治すための正しい行為なのでしょうか?行った方が良いのでしょうか?
目次
1.アイシングのデメリット
記事【炎症による股関節痛のメカニズムと治し方】痛みのしくみ⑨お話ししていますが、傷めた身体を治すためには、炎症という過程が必要不可欠です。炎症が起こることによって、傷めたところが治っていくのです。
患部を治すには血流量増加が必要
炎症が起こると、発赤、腫脹、熱感、疼痛という、いわゆる「炎症の4徴候」の症状があらわれます。このうち、発赤、腫脹、熱感は、患部への血流量が増加するために起こるものです。
この血流量増加は、身体にダメージが加わると自動的に起こる現象です。私たちが生まれながらに持っている、身体の仕組みです。つまり、患部を治すためには、患部への血流量を増やすことが必要ということです。
アイシングは血流量を減らしてしまう
ところが、アイシングは、この患部への血流量を、増やすどころか、減らしてしまうのです!なぜなら、アイシングは、血管を収縮させて、血流を悪くさせてしまうからです。
そして、一度血管が収縮してしまうと、再び拡張するまでに数時間かかってしまう可能性があります。
したがって、アイシングをすると、患部の治癒を大幅に遅らせてしまうことになるのです!
アイシングのデメリット報告
このアイシングによるデメリットについては、様々な研究論文で報告されているようです。例えば、以下のデメリットが報告されています。
- 30分以上の長時間のアイシングによって、神経のダメージが残存した
- アイシングによって神経麻痺を起こしてしまった
- アイシングは筋損傷の回復を遅らせることになる
- アイシングはリンパ液の流れ阻害してしまう
- アイシングによって浮腫の回復が阻害される
- アイシングはアスリートのスピードや持久力などの、パフォーマンス能力を低下させる
そして、1978年に「RICE処置」を提唱したDr.Gabe Mirkinは、2014年にその考えを覆しました。自身のホームページ「DrMirkin.com」の「Why Ice Delays Recovery」という記事で、「アイシングは治癒を助けるものではなく、遅らせるかもしれない」と述べています。
このように、アイシングには多くのデメリットがあるのです。
長引く股関節痛とアイシング
記事【股関節痛を治すには自然治癒力向上と血流改善が非常に重要】痛みのしくみ⑥でお話ししていますが、股関節痛が長引いてしまう理由の一つが、血流不全です。血流が悪いと、痛みが長引いてしまうのです。
で、お話ししているように、アイシングは血流を悪くさせてしまいます。なので、長引く股関節痛に対してアイシングを行うと、痛みを治すどころか、さらに痛みを長引かせてしまうことになるのです。
2.アイシングのメリットと注意点
以上のように、デメリットが多いアイシングですが、全くメリットがないわけではありません。
アイシングは痛みを和らげる
大きなメリットとして、アイシングには痛みを和らげる効果があります。
ですので、例えば、患部の痛みがあまりにも強い場合や、身体を傷めたスポーツ選手が至急競技に復帰しないといけない場合などでは、アイシングが役に立ちます。
私たちの身体は、強い痛みを長い時間感じ続けていると、痛みを感じやすい身体になってしまい、痛みが治りにくくなってしまいます。それを防ぐための手段として、痛みを和らげる効果があるアイシングは有効です。
アイシングの注意点
しかしこれは、炎症反応を抑えたり、神経を麻痺させたりして、痛みを感じにくくさせているだけです。傷めたところを治しているわけではなく、むしろ、傷めたところの治癒を遅らせているのです。
そして、いくつかの研究論文で、アイシングは、20分以上行うと、神経や組織の損傷を引き起こす可能性が高い、運動パフォーマンスの低下を引き起こす、と報告されています。
したがって、股関節痛を和らげる目的でアイシングをするにしても、その時間は20分までとした方が良いでしょう。
まとめ
股関節痛とアイシングについてまとめると、次のようになります。
- 股関節痛を治すためには血流を良くする必要があるが、アイシングは血流を悪くさせるので、股関節痛へのアイシングは基本的にはやらない方が良い
- アイシングには痛みを和らげる効果があるので、痛みがあまりにも強い場合は、20分以内ならアイシングしても良い
ということで、股関節痛へのアイシングは、メリットとデメリットを良く理解したうえで行いましょう。
痛いところを冷やすと気持ち良いですが、それは痛みが治っていっているということではありません。痛みをただやり過ごしているだけなのです。むしろ、治りにくくさせているのです。
ただ、強い痛みを長い時間感じ続けていると、身体は痛みを感じやすくなってしまい、それはそれで痛みが治りにくくなってしまいます。それを防ぐための手段の一つとして、アイシングをすることは良いと思います。
「股関節痛にアイシングはしない、ただ痛みがあまりにも強いときはしても良い」このような感じのイメージを、アイシングには持っておいて下さいね。
股関節痛を治すために行った方が良いかどうかは、血流がどうなるかがポイントです。血流が良くなることは行い、血流が悪くなることは行わない、これが基本です。(^^)/
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