股関節痛の改善ストレッチで絶対やってはいけないこと
股関節痛で困っているとき、「ストレッチをしたら痛みが楽になるのでは」と考える人は、まあまあ多いんじゃないかな~って思います。そんな人のためにと、「股関節痛に効くストレッチは、これだ!」、「このストレッチで股関節痛が劇的改善!」などと、様々なストレッチ法が多くのメディアで紹介されています。
一方、「ストレッチをして余計に痛みが強くなってしまった」、という話もよく聞きます。実は私も、手術宣告された股関節痛に悩まされていたとき、ストレッチをしたことでさらに痛みが強くなってしまった経験があります。これは一体、どういうことなのでしょうか?
片やストレッチは効果があるとされ、片やストレッチで痛みが増す。この記事では、そんなストレッチの謎に迫り、股関節痛に対するストレッチ効果について、お話ししていきます。(^^)/
目次
1.ストレッチで股関節痛が悪化~私の経験~
私が手術宣告された股関節痛に悩まされていたときのことです。そのときは、すでに理学療法士として急性期病院に勤務していましたが、痛みや身体に関してまだ本当のことを知らず、安易に次のように考えていました。
「硬くなっている筋肉をストレッチして柔らかくすれば、身体にかかる負担が軽くなり、痛みが良くなるかもしれない」
そして、痛みを我慢してまでも、一生懸命ストレッチしました。すると、筋肉は柔らかくなるどころか、さらに硬くなっていき、痛みも強くなっていきました。「痛くてもストレッチを続ければ、そのうち楽になるはずだ!」と気合を入れて、何日も続けてストレッチを行いました。
しかし、その甲斐なく、筋肉は硬いままで、痛みも強くなるばかりでした。ストレッチすればするほど痛みが強くなっていくことに、虚しさを感じました。そして、数週間後に、ストレッチはやめてしまいました。
「ストレッチをすれば、痛みが良くなる」、このことは、正しいのでしょうか?間違っているのでしょうか?
2.ストレッチの本来の目的と効果的な方法
ストレッチは股関節痛の改善に効果があるのかどうか、私はこの疑問を解き明かすために、「ストレッチとは何ぞや?」というストレッチの原点から考えてみることにしました。
ストレッチの本来の目的
ストレッチって、どんなときにしますか?おそらく、固くなった身体を柔らかくしたいときに、するのではないでしょうか。実際、多くの人は、ストレッチをして身体が柔らかくなったという経験があると思います。このように、身体を柔らかくすることが、ストレッチの本来の目的です。
効果的で効率的なストレッチ法
身体を柔らかくするストレッチには様々な方法がありますが、最も効果的な方法はどのようなものでしょうか?これまでの研究で示されている、最も効果的で効率的なストレッチは、次のような感じです。
- 痛みを感じない程度の強さで、20~30秒ほど持続的に筋肉を伸ばす
これまでの研究によると、10秒では柔軟性は向上せず、20秒以上で柔軟性が向上するようです。また、20秒と60秒では、柔軟性の向上に大きな違いはみられないようです。
3.股関節痛へのストレッチ
では、痛みに対する効果的なストレッチは、どのようなものでしょうか?はたまた、痛みに対しては、ストレッチはしない方が良いのでしょうか?
ストレッチと筋肉中の酸素量と血流量
ストレッチに関する研究論文の中で、ストレッチをしている筋肉の中の酸素の量や血液循環について、調べたものがあります。広島工業大学の永澤健らの「静的ストレッチングの伸長時間の違いが伸長部位の筋酸素飽和度および筋血流量に及ぼす影響」という論文です。
この論文では、健康な成人に、10秒、30秒、60秒の3種類の持続的なストレッチをさせ、それぞれの筋肉の中の酸素量と血流量の変化を調べています。その結果、ストレッチ前と比べて、どの持続時間でも、ストレッチを終えた直後は、筋肉の中の酸素量が3.5~3.9%増加し、血流量が2.6~2.9倍に増加することが分かりました。
この筋肉中の酸素量や血流量の変化は、ストレッチの持続時間の違いに差がないということなので、10秒という短い時間のストレッチでも、ストレッチを終えた直後の酸素量や血流量の増加効果がある、ということになります。
また、ストレッチ中は、その持続時間に応じて、筋肉の中の酸素量がどんどん低下していくことも分かりました。
ストレッチと痛みの関係
ところで、記事「【自然治癒力向上と血流改善が痛みを自分で治すために必要な基本の2つ】痛みのしくみ⑥」でもお話ししているように、筋肉の酸素不足や栄養障害は、股関節痛の痛みを増強させます。一方、筋肉の血流量が多いほど、筋肉への酸素供給や栄養は高まります。これらのことと、先ほど紹介した研究論文から、次のことが言えます。
【ストレッチ後の現象】
- ストレッチをした後は、筋肉の酸素量や血流量が増加するため、痛みが軽くなる可能性がある
- その痛み軽減効果は、ストレッチの持続時間が10秒でも60秒でも差がない
【ストレッチ中の現象】
- ストレッチ中は、筋肉の酸素量が減少するため、痛みが強くなる可能性がある
- その痛み増強作用は、ストレッチの持続時間が長くなるにつれて大きくなる
以上のことをまとめると、次のようになります。
「痛みがある筋肉をストレッチすると、ストレッチ後に痛みが軽くなることがあるが、長い時間ストレッチをしていると、逆に痛みが強くなることもある」
これで、私がストレッチをして股関節痛が酷くなってしまった理由が分かりました!痛みを我慢して、長い時間をかけて、一生懸命ストレッチしていたことが、良くなかったようです・・(>_<)
股関節痛改善のためのストレッチ法
ということで、股関節痛を改善させるためにストレッチをするのであれば、その持続時間は10秒ほどに留めておく、ということが大切なようですね。なお、この方法でのストレッチでは、持続時間が短いため、筋肉の柔軟性を向上させることは難しいです。
患部をストレッチする意味
痛みがあるということは、そこを傷めている可能性が高いということです。ですので、痛みがある患部をストレッチするということは、例えて言うなら、切り傷の傷口を強い力で引っ張るようなものです。
このようなことをすれば、切り傷は治るどころか、ますます酷くなっていってしまいます。指を切ったからといって、その傷口を引っ張って治そうとする人なんて、いないと思います。
このように、基本的には、患部をストレッチするということは、組織の損傷を拡大させる、ということなのです。なので、あえて痛みのある筋肉をストレッチする意味は、あまりないと思われます。
まとめ
股関節痛とストレッチについてまとめると、次のようになります。
- ストレッチを終えた直後は、10秒のストレッチでも筋肉中の酸素量と血流量が増加する
- ストレッチの時間が長ければ長いほど、筋肉中の酸素量は低下する
- 筋肉中の酸素量や血流量が増加すると痛みは軽くなり、筋肉中の酸素量が低下すると痛みは強くなる
- 股関節痛を改善させるためのストレッチは、10秒ほどに留めておく
- ストレッチで股関節痛が軽くなるのは筋肉中の酸素量や血流量が増加するからであって、身体が柔らかくなるからではない
ということで、股関節痛の改善ストレッチで絶対やってはいけないこととは・・患部の筋肉を10秒以上ストレッチすること!これをすると、股関節痛は治るどころか、ますます痛くなってしまうと思います。
股関節痛を改善させるために行うストレッチは、その方法に注意する必要があります。股関節痛が長引く大きな要因の一つが、血流不全です。血行の悪さです。ですので、患部の血流が悪くなることは、基本的にはしない方が良いです。したがって、ストレッチについても、血流が悪くなるような方法では行わない方が良いです。
私の個人的な意見としては、先ほどもお話ししましたが、股関節痛を改善させるために、わざわざ患部をストレッチする必要はあまりないのでは、と思っています。血流を改善させる方法は、例えば、運動、入浴、マッサージなど、他にもあります。これらの方が、ストレッチよりも効果的に効率的に、血流を改善させることが出来ると思います。
ただ、筋肉の柔軟性を良くして身体を柔らかくしておくことは、筋肉の血流悪化を防ぐことになり、股関節痛が出にくくなるので、患部以外の筋肉を痛みの出ない範囲で無理なくストレッチをするのは良いと思います。
改めてお伝えしますが、ストレッチの本来の目的は、筋肉の柔軟性を向上させて、身体を柔らかくすることです。そして、ストレッチは、組織の損傷を拡大させてしまうものです。これらのことも踏まえて、股関節痛改善のためのストレッチを行って下さいね。
ということで、くれぐれもストレッチのやり過ぎには、注意しましょう!患部へのストレッチは10秒に留めておきましょうね!(^^)/
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