【急性痛、慢性痛、あなたの痛みはどれ?痛みの分類と治療】痛みのしくみ⑬

「痛み」といっても、様々な種類があります。痛みにはどのようなものがあるか、様々な観点から分類することが出来ます。今回の記事では、痛みを、「病態」、「症状」、「原因」に着目して分類していきます。そして最後に、意外なオチが待っています。(^^)/

今回の記事も途中から専門用語が多くなって、やや難しいかもしれません。自分で痛みを治すためには、とりあえず「病態による分類」と「まとめ(痛みの分類と治療)」だけでも読んで頂けると良いと思います。(^^)/

病態による分類

痛みは病態の違いによって、急性痛慢性痛に分けることが出来ます。

従来、痛みは、その持続時間によって、急性痛慢性痛に分類されてきました。しかし、現在では、両者の病態や発生メカニズムがまったく違うものであることが示され、痛みは決して時間的経過によって分類、定義されるものではないと捉えられています。

急性痛

急性痛とは、損傷した組織の治癒に通常必要な期間内に出る痛みです。多くは、痛みを感じている場所に、痛みの原因を確認することが出来ます。けがや急性の疾患で経験する痛み、手術後に経験する痛みなどは、急性痛です。

急性痛は一過性のもので、その原因となっているけがや疾患などが治れば、痛みは消失します。急性痛は鎮痛薬で痛みを軽減することが出来ます。

急性痛は、もともと生物に備わっている、組織が損傷していること、生体が危機にさらされていることを知らせる警告信号です。安静が必要なことを知らせて、それによって治癒を促すようにさせています(生体警告系)。

もし急性痛が適切に発生しなければ、命を落とす危険性が極めて高くなります。ですので、急性痛は、私たちが生きていくためには、なくてはならない必要不可欠なものであります。

慢性痛

慢性痛とは、組織損傷が明らかに治癒しているにも関わらず出ている痛みや、組織が損傷していないにも関わらず出ている痛みです。慢性痛は、痛みを感じている場所に、痛みの原因を確認することが出来ません。

画像や血液検査によって異常が見当たらないのに痛い、いつまでも痛みが続く、という場合などは、慢性痛の可能性があります。慢性痛は、手術や薬での治療が奏功しません。

慢性痛は、生体警告系の役割を果たすものではなく、ただただ生活の質(QOL:quality of life)を著しく損なう病態と言え、生物学的意義はありません。生活の質とは、人間らしく生活しているか、自分らしく生活しているか、幸福な人生であるか、ということを尺度として捉える概念です。

慢性痛は、神経系の感作可塑的変化が原因と考えられています。感作とは、感じやすくなっている、反応しやすくなっている状態のことです。可塑とは、形を変えやすいことで、可塑的変化とは、変形して元に戻らないような変化のことです。

痛みの情報伝達系は可塑性が高く(何にでも変わりうる自由度が高い)、この可塑性の高さが痛みの神経回路を歪みやすくしています。

強い痛みが持続すると、痛みの神経回路に可塑的変化(混線などの歪み)が起こりやすくなります。その結果、接触や熱のような非侵害性(身体に害を及ぼさない)の刺激、精神や自律神経系などに加わる様々な刺激を、痛みとして感じてしまうようになります。

「触るだけで痛い」、「冷えると痛い」、「ストレス下や緊張時に痛みが増す」など、痛みにとりつかれた“痛み病”とでも言うべき状態となり、通常では痛みを感じないような刺激や状況でも、痛みを感じるようになってしまいます。

ちなみに、臨床上は痛みの持続期間を慢性痛の診断基準することが実用的であるため、「3ヶ月以上にわたり持続または頻発する痛み」を慢性痛と診断することも多いようです。

まとめ

以上のように、急性痛慢性痛は、まったく違った病態です。慢性痛は複雑な病態であり、多様な症候や徴候を示す症候群であります。

急性痛は疾患に伴う「一症状」ですが、慢性痛は新たな「疾患」と捉えられるようになってきています。

症状による分類

ここでは、通常の痛みとは異なる、治りにくい痛みを分類します。治りにくい痛みには、アロディニア痛覚過敏痛覚鈍麻自発痛灼熱痛などがあります。

アロディニア

アロディニアとは、明らかに正常な皮膚に、通常では痛みを起こさないような刺激を与えても、痛みが出ることです。アロディニアでは、触られたり、圧迫されたり、温かいものや冷たいものが触れたりしただけで、痛みを感じます。衣服や寝具が触れる、風があたるなどの軽微な刺激でも、痛みを感じます。

アロディニアは、感覚の質が変化している状態で、刺激と反応の様式が異なっている状態です。例えば、正常では触られたら「何かが触った」と感じるのですが、アロディニアでは触られたら「痛い!」と感じます。このように、ある刺激に対する感覚が正常とは違うものになっている状態です。つまり、この例でいうと、正常では「触刺激」に対して「触覚」が生じるのですが、アロディニアでは「触刺激」に対して「痛覚」が生じてしまいます。

アロディニアの発生メカニズムとしては、侵害受容器痛みセンサー)の閾値の低下やエファプス末梢性感作)、脊髄後角広作動域ニューロンの閾値の低下やシナプス再構築(中枢性感作)などによって、非侵害刺激が侵害受容ニューロンに伝わり、痛みとして知覚するようになっていると考えられています。閾値とは、神経(ニューロン)を興奮させるために必要な、最低限の刺激の強さの値のことです。閾値が低下するということは、神経が興奮しやすくなったということです。

感作エファプス、シナプス再構築については、記事【何でこんなに痛いの?ロキソニンの出番?痛みの感作とは】痛みのしくみ⑯で詳しくお話ししています。

痛覚過敏

痛覚過敏とは、痛み刺激に対する痛みを、通常感じる程度以上に強く感じることです。痛覚過敏は、アロディニアとともに生じることが多いです。

痛覚過敏は、損傷組織で生じるものを一次痛覚過敏、損傷組織の周囲で生じるものを二次痛覚過敏と言います。

痛覚過敏の発生は、一次痛覚過敏侵害受容器の閾値の低下(末梢性感作)、二次痛覚過敏脊髄後角侵害受容ニューロンの閾値の低下(中枢性感作)によるものです。

痛覚鈍麻

痛覚鈍麻とは、痛覚過敏の逆で、痛み刺激に対する痛みを、通常感じる程度以下に弱く感じることです。

自発痛

自発痛とは、刺激をまったく受けていないにも関わらず出る痛みのことです。

灼熱痛

灼熱痛とは、「焼けつくような痛み」と表現される痛みです。日本では、「触れられると痛い」、「ビーンと痛みが走る」、「しびれるような」と表現される場合が多いと言われています。末梢神経損傷後に生じる、激しい持続的な灼熱痛カウザルギーといいます。

原因による分類

痛みは原因の違いによって、器質的疼痛非器質的疼痛に大別でき、器質的疼痛はさらに侵害受容性(炎症性)疼痛神経障害性疼痛に分けることができます。

器質とは、身体の器官の構造的、形状的な性質、という意味です。器質的疼痛とは、痛みの原因として、身体の器官の中に、物質的な物理的な異変(器質的病変)を特定できる痛みです。非器質的疼痛は、その逆で、器質的病変を特定できない痛みです。

侵害受容性(炎症性)疼痛

侵害受容性(炎症性)疼痛は、最も一般的に起こる痛みで、組織損傷を引き起こすような機械的刺激(外傷など)や熱刺激(火傷など)、組織損傷やその後の炎症によって産生される様々な化学物質(発痛物質)などによって、組織の侵害受容器が直接的に刺激されて出る痛みです。

侵害受容性(炎症性)疼痛は、体性痛と内臓痛に分けられ、さらに体性痛は表在痛(皮膚、粘膜)と深部痛(骨関節、骨格筋など)に分けられます。

侵害受容器が持続的に刺激されると、侵害受容器感作末梢性感作)し、さらに中枢神経系にも感作が起こり(中枢性感作)、痛みは持続、憎悪することになります。

神経障害性疼痛

神経障害性疼痛は、痛みの伝達や抑制機構に関わる中枢神経系および末梢神経系が、変性や断裂、損傷、虚血したときに起こる痛みです。

末梢神経損傷、脳卒中、脊髄損傷など、様々な神経損傷によって起こる可能性があります。アロディニア痛覚過敏のほか、様々な知覚異常を伴うことが多く、発汗や皮膚温の異常など、交感神経の過剰興奮症状を示すこともあります。

発生メカニズムとして、交感神経を含む末梢神経中枢神経に起こった、機能的、器質的(構造的、形状的)変化が複合的に関与すると考えられています。

末梢神経では、刺激に対する感受性の亢進、損傷部での異常興奮の発生、エファプスの形成、末梢神経の発芽、軸索反射(逆行性伝導)、交感神経末端からのプロスタグランジンの放出、αアドレナリン受容体の発現と増加、神経腫の形成、異所性興奮などが関与しています。

エファプスとは、2個以上の神経が正常なシナプスを形成せずに電気的に接合する部位のことです。通常、神経は電気的に絶縁されていますが、神経が損傷して絶縁状態ではなくなると、その部分が接触することにより、電気刺激が通常とは異なる神経に伝達されてしまいます。

中枢神経では、脊髄後角の感受性の亢進や異常興奮、大脳皮質感覚野の再構築、前頭前野の機能異常、下行性疼痛抑制系の機能低下などが関与すると考えられています。

ちなみに、神経障害性疼痛に似たような言葉で、神経因性疼痛というものがありますが、これは、原因が神経系にある痛みのことで、侵害受容器の興奮が出発点ではない痛みを意味しています。

非器質的疼痛

非器質的疼痛とは、説明しうる器質的病変がないにも関わらず出る痛みや、器質的病変は存在するものの、それにより十分な説明が出来ない痛みのことを言います。

以前は心因性疼痛と呼ばれていた痛みもここに含まれ、最近は中枢機能障害性疼痛機能性疼痛症候群とも呼ばれます。

心因性疼痛とは、器質的、機能的病変がない、またはあったとしても痛みの訴えと合致しない場合で、心理的要因が大きく影響する痛みのことです。

非器質的疼痛の場合も、侵害受容性(炎症性)疼痛神経障害性疼痛といった器質的疼痛が発端になることも多く、これらとの鑑別は厳密には難しいです。また、これらの痛みが重複すると、痛みが慢性化、重篤化してしまうことが多いです。

まとめ(痛みの分類と治療)

以上のように痛みは、病態、症状、原因によって、様々な痛みに分類することが出来ます。ただ、このような記事を書いておきながら言うのは何ですが、実際に痛みを治そうとするとき、このような分類はあまり重要ではありません。なぜなら、どのような痛みであろうと、根本的に治すためにすべきことは、全て同じだからです。

その、痛みを根本的に治すためにすべきこととは、心身ともにひたすら健康になる、ということです。

痛みというのは、身体の損傷や異常が治り、心のストレスがなくなれば、自然と消えてなくなっていくものです。そして、身体の損傷や異常を治すのは、心のストレスを解決するのは、薬や病院などではなく、私たち自身の細胞であり、心そのものなのです。

身体の全ての細胞が健全に機能し、ストレスのない心であれば、痛みは所定の治癒期間を経て自然と治っていくのです。そして、それを実現するためにすべきことが、心身ともに健康になる、ということなのです。

慢性痛だからこの治療法、アロディニアだからこの治療法、神経障害性疼痛だからこの治療法、といった感じで、痛みの種類ごとに特定の治療だけを行うことは、根本的には治っていかないことが多いと思います。なぜなら、その治療法では改善しない機能不全の細胞などが、そのまま残ってしまう可能性が高いからです。

この場合、その機能不全の細胞などによって、治癒が長引いたり他のところに病変が出たりしてしまうことがあります。そして結局、なかなか痛みが治っていかない、他のところも悪くなってしまった、ということになってしまうのです。

ということで、結局は、心身ともに健康になることをひたすら実行する、ということが、最速最短で根本的に痛みを治すことになるのです。痛みの分類については、「へ~、そうなんだ~」ぐらいにしておきましょう。再度言わせて頂きますが、痛みを治すためにすべきことは、どんな痛みでも同じなのですから。(^^)/

〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.
沖田実,松原貴子:ペインリハビリテーション入門,三輪書店.2019.

 

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