【股関節痛が長引く痛みの悪循環の全貌】痛みのしくみ⑦

股関節痛は、ひとたび発生すると、長引いてしまうことがあります。その理由の一つに、記事【股関節痛を治すには自然治癒力向上と血流改善が非常に重要】痛みのしくみ⑥でお話しした「痛みの悪循環」に陥っている、ということがあります。

今回の記事では、「痛みの悪循環」に陥るメカニズムを、もう少し詳しくお話ししていこうと思います。

1.屈曲反射が痛みの悪循環のきっかけ

私たちの身体には、屈曲反射というしくみが備わっています。「ふと足の裏で画鋲を踏んでしまったとき、反射的に足が引っ込む」、「ふと熱いやかんに手が触れてしまったとき、反射的に手が引っ込む」、こういった身体の反応は、痛み刺激(侵害刺激)から逃避するための脊髄反射の一つで、屈曲反射と呼ばれています。

足や手が引っ込むということは、脚や腕が動いた、ということです。脚や腕を動かすのは、筋肉です。脚や腕が動いたということは、そこにある筋肉に力が入った、ということです。

ですので、屈曲反射を簡単に説明すると、「身体に痛み刺激が加わると、筋肉に力が入る」ということになります。つまり、股関節痛があると、屈曲反射によって勝手に筋肉に力が入り、筋肉がこわばっていく、ということなのです。

ということで、この屈曲反射による筋肉のこわばりが、「痛みの悪循環」のきっかけになって、股関節痛が長引いていくことがあるのです。

2.痛みの悪循環の完成メカニズム

で、筋肉のこわばりとは、筋肉に力が入って筋肉が硬くなってしまっている状態です。これによる弊害は、主に2つあります。血流の減少乳酸の蓄積です。

血流の減少

筋肉が硬くなっていると、筋肉の中やその周囲の圧力が高くなります。すると、そこにある血管は圧迫されて押し潰されて細くなってしまい、そこより先の血管の血流が悪くなり、血流が減少してしまうのです。

血流が減少すると、そこにある筋肉や周囲の組織に酸素や栄養素が十分に届かなくなってしまい、それらの細胞が酸素不足や栄養障害に陥ってしまいます。

乳酸の蓄積

一方、筋肉に力が入る(筋収縮する)には、そのためのエネルギーが必要になります。その筋肉がそのエネルギーを得る過程では、乳酸という物質が作り出されます。

筋肉がこわばっている状態とは、筋肉に力が入り続けている状態であり、この状態ではエネルギーが次々と消費され、乳酸がどんどん作り出されていきます。すると、身体に乳酸が蓄積されていくようになります。

アシドーシスと栄養障害で発痛物質が増産

この血流減少による酸素不足と筋収縮による乳酸蓄積によって、こわばっている筋肉のあたりは、アシドーシスになってしまいます。アシドーシスとは、血液が酸性になってしまうことです。

このアシドーシスや血流減少による栄養障害によって、こわばっている筋肉やその周辺の細胞から、ブラジキニンなどの発痛物質が作り出されていくことになります。その結果、新たな痛みが追加されてしまいます。

追加の発痛物質で筋肉のこわばり強化

すると、その痛みによって、さらに筋肉のこわばりが強化されてしまい、ますます発痛物質が作り出され続け、痛みが取れなくなっていき、股関節痛が長引いていくことになってしまうのです。

これで「痛みの悪循環」が完成、ということになってしまいます。

3.痛みの悪循環を強化する3つの要因

さらに、この「痛みの悪循環」を強化する要因がいくつかあります。主なものを3つお話しします。

ストレスや緊張状態

私たちの身体には交感神経という自律神経がありますが、この神経に刺激が伝わると、血管が収縮します。血管が収縮すると血管は細くなり、血流が減少してしまうので、「痛みの悪循環」を強化させてしまいます。

どのようなときに交感神経に刺激が伝わるかというと、活動しているとき、ストレスがあるとき、緊張しているときなどです。

股関節痛があると、ストレスを感じたり緊張したりしていることが多いと思いますが、それらがさらに股関節痛を長引かせてしまうことになるのです。

悪い姿勢や歩き方

股関節痛があるときは、その痛みをかばって、姿勢や歩き方が悪くなってしまいます。すると、股関節周りでも一部の筋肉に負担が集中し、その筋肉がこわばっていきます

その結果、その筋肉のあたりでは血流が減少し乳酸が蓄積されていくので、痛みが増強し「痛みの悪循環」が強化されてしまいます。

不活動状態

股関節痛があるときは、その股関節のあたりをあまり動かさなくなります。また、痛みが出ないようにしながら身体を動かすので、全体的な活動量も減ります。

このような不活動な状態は、それ自体が痛みを発生させやすくしてしまい、痛みを長引かせてしまうことが、様々な研究で明らかになっていて、「痛みの悪循環」を強化してしまうことになります。

そして、その不活動な状態は、その部分の柔軟性を低下させ、関節の可動域を狭くしてしまったり、筋力を低下させてしまいます。いわゆる、関節拘縮筋萎縮となってしまいます。

すると、姿勢や歩き方が悪くなり、先ほどお話ししたようなことで、「痛みの悪循環」が強化されてしまいます。

まとめ

今回は「痛みの悪循環」についてお話ししましたが、その流れを整理してみると、こんな感じです。

股関節痛⇒屈曲反射⇒筋肉のこわばり⇒血流減少、乳酸蓄積⇒アシドーシス、栄養障害⇒発痛物質産生⇒痛み追加⇒屈曲反射⇒筋肉のこわばり・・

このようにして「痛みの悪循環」に陥っていきます。そして、次の要因などで「痛みの悪循環」が強化されてしまいます。

  • ストレスや緊張状態
  • 悪い姿勢や歩き方
  • 不活動状態

これらの関係を図に表すと、こんな感じです。

ということで、股関節痛が長引いているときは、「痛みの悪循環」に落ちいている可能性がありますので、股関節痛を治すためには、これを断ち切る必要があります。そして、股関節痛を最速最短で治すためには、この悪循環の全てを断ち切るようにしていくと良いと思います。

すなわち、筋肉のこわばりを解消させること、血流を良くすること、ストレスや緊張状態から解放されるようにすること、姿勢や歩き方を良くすること、適度に身体を動かすこと、などを行えば良いということになります。(^^)/

ちなみに、筋肉のこわばりの原因については、記事【股関節痛の原因の最有力候補、筋肉のこわばり4つの原因】痛みのしくみ⑧でお話ししています。

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