【やっぱり足で地面を蹴っていた?トゥロッカーの策略】歩き方のしくみ⑩

記事【ここで加速を決めろ!フォアフットロッカーの願い】歩き方のしくみ⑨に引き続き、今回も正しい歩き方を知るために絶対に理解しておいて欲しい「ロッカー機構」についてお話しします。

この記事の中でお話しする、ロッカー機構を成立させるための筋肉の働きについての解説は、一般的に言われている内容になります。

実際に正しい歩き方を身につけるためには、それ以外の事柄の方が大切だったりします。

では、今回は「トゥロッカー」についてです。

④トゥロッカー

前回説明したフォアフットロッカーは、踵が持ち上がることで始まり、反対側の足が地面に着くことで終わります

私たちが歩いているときは、反対側の足が地面に着いたからといって、すぐにフォアフットロッカーが行われていた足が地面から離れるわけではありません。

しばらくは、中足骨頭(指のつけ根あたり)から足趾(足の指)にかけて、地面に着いたままの状態が続きます。

その後、中足骨頭が持ち上がり、足趾、最終的に母趾(親指)が地面から離れていきます。

図1:トゥロッカー

この間、中足骨頭や足趾を支点にして、脛骨(すねの骨)が前方へ回転していきます

これをトゥロッカー(足趾ロッカー)といいます(図1)。

このとき、足関節(足首)は底屈していき(倒れていき)、膝関節は屈曲していきます(曲がっていきます)。

このトゥロッカーは、反対側の足が地面に着くことで始まり、足趾が地面から離れることで終わります。

トゥロッカーと筋肉

トゥロッカーで重要なことは、脛骨を前進させることで推進力を生むことです。

先ほどお話ししたように、このトゥロッカーのとき、足関節は底屈していきます。

これは、足首を下に倒していっている、ということです。

これはつまり、足で地面を蹴っている、ということです!

地面を蹴るということは、脚の筋力を使って蹴っているように思うかもしれませんが、違うのです!

図2:アキレス腱による底屈

実は、この足首を倒して地面を蹴る力の源は、なんと、筋肉ではなく、主にアキレス腱なのです!(図2)

そのメカニズムは、こうです。

反対側の足が地面に着くと、その脚で体重を支える始めようとするので、フォアフットロッカーが行われていた脚にかかっている力(体重など)が、急速に小さくなっていきます。

このため、フォアフットロッカーが行われていた脚のヒラメ筋や腓腹筋は、急速に筋力を弱めます。

一方、フォアフットロッカーが終わるまで(反対側の脚が地面に着くまで)、アキレス腱は、ヒラメ筋と腓腹筋の筋力によって引き伸ばされています。

そして、反対側の足が地面に着くことによってヒラメ筋と腓腹筋の筋力が弱くなると、引き伸ばされていたアキレス腱は元の長さに戻ろうと縮まります。

そして、このアキレス腱が縮まる力で、足首は倒れていくのです!!

ヒラメ筋や腓腹筋などの筋力によって足首を倒しているわけではないのです!!

アキレス腱がバネのような働きをして足首を倒しているのです!!

そして、このアキレス腱の足首を倒す力が脛骨を前進させ、その脛骨の前進する勢いが推進力となるのです。

このトゥロッカーでの推進力の生成について整理すると、次のようになります。

【トゥロッカーでの推進力の生成機序】

①アキレス腱が、ヒラメ筋と腓腹筋の筋力によって引き伸ばされる
②反対側の足が地面に着く
③脚にかかっている力が小さくなる
④ヒラメ筋と腓腹筋の筋力が小さくなる
⑤引き伸ばされていたアキレス腱が、元の長さに戻ろうとして縮まる
⑥足首が倒れていく
⑦脛骨が前進する

本当のプッシュオフ

前回、プッシュオフ(push off:踏み切り、蹴り出し)という用語を紹介しました。

このプッシュオフという用語は、このトゥロッカーのときに用いられる方が適切だと思われます。

ただ、トゥロッカーでのプッシュオフは、身体を前進させるものではなく、脚を前進させるものです。

そして、このプッシュオフは、筋力ではなく、アキレス腱が縮もうとする力で行われているのです。

今回で正しい歩き方を理解するために必要な、4つのロッカー機構の説明は終わりになります。

次回は、「推進力の生成」について、まとめてみようと思います。(^^)/

 

↓「歩き方や姿勢のしくみ」記事一覧はこちら
https://feuno.com/category/gait-posture-mechanism

 

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