【痛みの神経と脳、一次痛と二次痛、外側系と内側系って、何だ?】痛みのしくみ⑪

記事【痛みを自分で治すために知るべき3つの原因と根本的なメカニズム】痛みのしくみ①で、痛みは、3本の神経によって痛み刺激が脳に伝わることで出る、とお話ししました。今回の記事では、このことについて、もう少し詳しく専門的にお話ししようと思います。脳や神経の解剖図などを、本や他のサイトで見ながら読み進めて頂くと、より理解が深まると思います。(^^)/

この内容は、まあまあ難しいと思いますので、適当に読んでもらえればと思います。強いて言えば、一次痛二次痛外側系内側系というのがあって、それぞれの役割を知って頂ければ良いかなと思います。(^^)/

痛み神経の概要

まず、おさらいです。痛みは、痛み刺激が末梢の組織(皮膚、筋肉、内臓など)にある痛みセンサーにキャッチされ、その痛み刺激が電気信号に変換されて神経を伝って大脳に伝わることで、出るようになります。

そして、刺激を大脳まで伝えているのは1本の神経ではなく、下図のように、基本的に3本の神経を使って伝えています。

このように、3本の神経が繋がっている中継点は、「脊髄」と「視床」です。神経は1つの細胞であり、神経細胞を英語ではneuron(ニューロン)といいます。末梢から大脳までの神経を順に、「一次侵害受容ニューロン」、「二次侵害受容ニューロン」、「三次侵害受容ニューロン」といいます。

では次から、それぞれのニューロンの特徴についてお話ししていきます。

一次侵害受容ニューロンの特徴

一次侵害受容ニューロンは、痛み刺激によって生まれた痛みセンサーの興奮を脊髄へ伝える神経です。一次侵害受容ニューロンの系統図を下に示します(図1)。

図1:一次侵害受容ニューロン系統図(画像をクリックすると拡大できます)

痛みセンサーの種類

一次侵害受容ニューロンの末端(末梢側)は自由神経終末とよばれ、2種類の痛みセンサーが存在します。それらは、高閾値機械受容器ポリモーダル受容器と呼ばれています。

これらの痛みセンサーは、刺激を与えられると興奮し、電気信号が生まれます。その興奮によって生まれた電気信号は、神経を伝わっていきます。ちなみに、この電気信号は、専門的には活動電位と呼ばれています。痛みセンサーの興奮性は、与えられる刺激の強度に伴って変化します。

高閾値機械受容器は、侵害性(身体に害を及ぼすような)の強い機械的刺激が与えられると興奮しますが、弱い機械的刺激では興奮しないという特徴があります。

ポリモーダル受容器は、侵害性、非侵害性に関わらず、機械的刺激、熱刺激、化学的刺激が与えられると興奮するという特徴があります。ちなみに、ポリモーダルの「ポリ」は多様な、「モーダル」は様式という意味です。

一次侵害受容ニューロンの種類

一次侵害受容ニューロンには、Aδ線維C線維の2種類があります。

Aδ線維は、直径5μm以下、伝導速度30m/s以下のもので、痛みセンサーの興奮を素早く脊髄へ伝えます。

C線維は、直径1.5μm以下、伝導速度2m/s以下のもので、痛みセンサーの興奮を比較的ゆっくり脊髄へ伝えます。

痛みの種類(一次痛と二次痛)

痛みには2種類あって、一次痛二次痛と呼ばれています。

一次痛は「刺すような鋭い痛み」で、二次痛は「鈍く疼くような痛み」です。

組織が損傷されたときは、最初に一次痛が出て、少し遅れて二次痛が出ます。一次痛は一過性の痛みで、二次痛はしばらく継続する痛みです。

例えば、転んで頭を打ったとき、最初に感じる「火花が飛ぶような痛み」は一次痛で、その後に感じる「ズキズキした痛み」は二次痛です。

このように、一次痛二次痛で痛みを感じるタイミングが異なっていることから分かるように、一次痛Aδ線維によって、二次痛C線維によって脊髄に伝えられています。

神経線維と痛みセンサーの組合せ

Aδ線維自由神経終末うち、皮膚表面にあるものにはポリモーダル受容器が、深部組織にあるものには高閾値機械受容器が存在しています。

C線維自由神経終末には、ポリモーダル受容器が存在しています。

痛みセンサーの受容体

痛みセンサーには、刺激を受け取る受容体が存在します。この受容体は何種類もあり、それぞれ決まった刺激しか受け取ることができません。

Aδ線維の皮膚表面にあるポリモーダル受容器に存在する受容体には、機械的刺激に応答するもの、熱刺激に応答するもの、化学的刺激に応答するものがあります。化学的刺激については、プロスタグランジンI2に対する受容体が存在します。

Aδ線維の深部組織にある高閾値機械受容器に存在する受容体には、機械的刺激に応答するものが存在します。

C線維ポリモーダル受容器に存在する受容体には、機械的刺激に応答するもの、熱刺激に応答するもの、化学的刺激に応答するものがあります。化学的刺激については、ブラジキニン、サブスタンスP、ヒスタミン、セロトニン、アデノシン三リン酸、カプサイシン、酸(水素イオン)、プロスタグランジンI2、プロスタグランジンE2、神経成長因子、種々サイトカインなどに対する受容体が存在します。

まとめ

以上のように、一次侵害受容ニューロンは、機械的刺激、熱刺激、化学的刺激を痛みセンサーの受容体で受け取り、その刺激を脊髄へ伝える役目を果たしています。

そして、一次侵害受容ニューロンには伝導速度が異なる2種類の線維、すなわちAδ線維C線維があります。

伝導速度が速いAδ線維によって伝えられる痛みは一次痛を、伝導速度が遅いC線維によって伝えられる痛みは二次痛を引き起こすことになります。

二次侵害受容ニューロンの特徴

二次侵害受容ニューロンは、一次侵害受容ニューロンの興奮を、脊髄で受け取り視床へ伝える神経です。

一次侵害受容ニューロンとの接続部

図2:脊髄の横断図

これまでの説明のように、一次侵害受容ニューロンは痛み刺激によって生まれた興奮を脊髄に伝えますが、脊髄の中でも「後角」というところに伝えます。

上の図2は、脊髄の横断図ですが、「後角」は灰色の部分の背中側(画面では上側)に突き出た角のようなところです。この灰色の部分は「灰白質」といい、神経細胞体が主に集まっているところです。また、白い部分は「白質」といい、神経線維が主に集まっているところです。

神経細胞とシナプスの概説

図3:神経細胞の模式図

説明していませんでしたが、神経細胞は、神経細胞体樹状突起軸索(神経線維)で構成されています。上の図3は、一般的な神経細胞の模式図です。この図以外の形態をしたものもあります(一次侵害受容ニューロンなど)。

図4:一次侵害受容ニューロンと二次侵害受容ニューロンのシナプスの模式図

一次侵害受容ニューロンは、脊髄後角で二次侵害受容ニューロンにバトンタッチします。このように神経がバトンタッチするところを「シナプス」といいます。

上の図4は、一次侵害受容ニューロン二次侵害受容ニューロンのシナプスの模式図です。このように一次侵害受容ニューロンは、軸索二次侵害受容ニューロン神経細胞体に向けています。

二次侵害受容ニューロンの種類

一次侵害受容ニューロン~二次侵害受容ニューロンの系統図を下に示します(図5)。

図5:一次~二次侵害受容ニューロン系統図(画像をクリックすると拡大できます)

一次侵害受容ニューロンには、一次痛を伝えるAδ線維と、二次痛と伝えるC線維がありますが、それぞれ脊髄後角の中でも異なる部分に入り、二次侵害受容ニューロンとシナプスを形成しています。

二次侵害受容ニューロンには、特異的侵害受容ニューロン広作動域ニューロンの2種類があります。

特異的侵害受容ニューロンは、侵害性の強い機械的刺激には興奮しますが、弱い機械的刺激には興奮しないという特徴があり、痛みの発生場所(損傷された場所)を知らせるニューロンと考えられています。

広作動域ニューロンは、侵害性、非侵害性に関わらず、幅広い刺激に興奮するという特徴があり、痛みの刺激の強度を知らせるニューロンと考えられています。

広作動域ニューロンは、深部組織からの刺激によって皮膚に痛みを感じる関連痛の発生に関係していると考えられています。また、繰り返し刺激が加わることにより感受性が増す「ワインドアップ(wind-up)」現象が起こったり、痛み以外の刺激を痛みとして伝達(例えば、触覚刺激によって発生した、触覚を伝えるAβ線維の興奮を、広作動域ニューロンが痛みとして伝達)するようになったりします。

一次侵害受容ニューロンとの組合せ

一次侵害受容ニューロンAδ線維は、特異的侵害受容ニューロンとシナプスを形成します。一方、C線維は、特異的侵害受容ニューロン広作動域ニューロンの両方ともシナプスを形成します。

つまり、一次痛特異的侵害受容ニューロンによって、二次痛特異的侵害受容ニューロン広作動域ニューロンによって、視床まで伝えられます。

三次侵害受容ニューロンの特徴

三次侵害受容ニューロンは、二次侵害受容ニューロンの興奮を、視床で受け取り大脳へ伝える神経です。三次侵害受容ニューロンのお話しをする前に、神経や脳について少しお話しします。

ヒトの神経系

ヒトの神経系には2種類あって、中枢神経末梢神経と呼ばれています。中枢神経は、多数の神経細胞が集まって大きなまとまりを作っているところで、脳と脊髄がそれに当たります。末梢神経は、中枢神経以外の全身に分布している神経のことをいいます。

脳は、延髄、橋、中脳、小脳、間脳、大脳で構成されています。このうち、延髄、橋、中脳を合わせて脳幹といいます。脳幹は呼吸や循環など生命維持に重要な中枢であり、意識レベルの維持にも深く関わっています。

脳幹には、網状に交差する神経線維と、その網の目の中に点在する神経細胞体で構成されている部位があり、この部位のことを網様体といいます。網様体は、呼吸や循環の中枢で、生命維持に不可欠な機能を担っています。

2種類の神経伝達経路:外側系と内側系

一次侵害受容ニューロン~三次侵害受容ニューロンの系統図を下に示します(図6)。

図6:一次~三次侵害受容ニューロンの系統図(画像をクリックすると拡大できます)

痛みを伝える神経のうち、脊髄から脳へ至る中枢神経の伝達経路には、外側系(感覚系)内側系(情動・認知系)の2種類があります。

外側系の経路は、脊髄⇒視床(外側核群)⇒大脳皮質の体性感覚野に至る系です。主に一次痛に関与するAδ線維からの経路ですが、二次痛に関与するC線維からの経路も存在すると考えられます(図には記載していません)。ちなみに、この系の脊髄から視床までの区間を、外側脊髄視床路といいます。

体性感覚野とは、体性感覚が伝達される大脳の領域です。体性感覚とは、皮膚感覚(触覚、痛覚、温度覚など)、深部感覚(位置覚、運動覚、振動覚など)、内臓感覚(※内臓感覚を除外する立場もある)のことです。体性感覚は、特殊感覚(嗅覚、視覚、聴覚、平衡覚、味覚)とは異なり、皮膚、筋、腱、関節、内臓の壁など、身体のいたるところで感じる感覚です。

内側系の経路は、脊髄⇒視床(内側核群)⇒大脳の島皮質前帯状回扁桃体海馬前頭前野に至る系です。この系は、脊髄から視床に至るまでに、延髄などの脳幹でシナプスを形成しています。ちなみに、この系の脊髄から視床までの区間のうち、脳幹でシナプスを形成していないものを、内側脊髄視床路といい、シナプスを形成しているものを、脊髄網様体視床路といいます。

大脳の内側系の部位ごとの役割

大脳は領域ごとに役割が異なります。内側系の領域ごとの役割を表にすると次のようになります。

部位 関与している役割
島皮質 情動
前帯状回 情動、認知
扁桃体 情動、記憶
海馬 記憶
前頭前野 情動、認知、記憶

内側系の領域のうち、前帯状回扁桃体海馬は、大脳辺縁系に含まれています。大脳辺縁系は、大脳半球の内側面にある領域で、情動、意欲、記憶、自律神経活動などに関わっている複数の部位の総称です。生物が生きていくために必要な、本能的行動を司る領域とされています。

ここで、情動、認知という少し分かりにくい言葉が出てきましたので、少し解説します。

情動、認知、知覚、感覚

情動とは、怒り、恐怖、喜び、悲しみなど、急速に引き起こされた一時的かつ急激な感情の変化のことです。

認知とは、ある対象を知覚したうえで、それが何であるか判断したり解釈したりする過程のことです。

知覚とは、ある対象から受けた感覚を、ひとまとまりの意味のあるものとして捉えることです。

感覚とは、ある対象から受けた刺激を、感覚器によって受け取ることです。

例えば、リンゴを見たとき、何か(リンゴ)が目に映ったと感じることが感覚(視覚)で、それを「赤い」、「丸い」と捉えることが知覚で、それを知識や経験に基づいて「リンゴだ!」と判断することが認知です。

外側系と内側系の役割

外側系は、主にAδ線維からの一次痛の伝達経路で、痛みの部位、強度、持続性など、痛みの種類を識別した身体的な痛みに関わる情報を伝達します。また、この経路は、触覚、深部圧覚、温度覚などを伝える刺激も伝達し、判別が明瞭な感覚の伝達経路といえます。

内側系は、主にC線維からの二次痛の伝達経路で、身体にとっての痛みの意味、ならびに情動や認知の情報を伝達します。この経路は、大脳辺縁系に作用することから、痛みに伴うイライラ感、恐怖、不安感などの不快な感情変化を引き起こします。また、間脳の視床下部(自律神経機能の調節を行う中枢)などにも影響を及ぼし、血圧上昇、頻脈、冷汗、顔面蒼白などの自律神経症状を引き起こします。

外側系と内側系の統合

三次侵害受容ニューロンは、二次侵害受容ニューロンの興奮を視床で受け取り、外側系では一次痛を大脳の体性感覚野へ伝え、内側系では二次痛を大脳の島皮質前帯状回扁桃体海馬前頭前野へ伝える神経です。

また、外側系内側系の両者は独立して存在するのではなく、いくつも接点があります。例えば、外側系の終点が体性感覚野というわけではなく、そこから大脳の領域をいくつか経由して島皮質に接続しています。つまり、島皮質は、内側系外側系の両方と接続していることになります。さらに、島皮質大脳辺縁系を含む様々な領域に接続しています。

したがって、痛み刺激による神経の興奮は大脳へ伝達されていきますが、最終的には外側系内側系の情報が統合され、痛みという感覚や、イライラ感や不安感、冷汗や顔面蒼白などの、様々な身体症状が出ることになるのです。

まとめ

痛みに関わる神経について、やや詳しく専門的にお話ししました。自分で痛みを治そうとするときは、ここまで知っていなくても良いとは思います。ただ、痛みには一次痛二次痛があって、外側系内側系が統合されて様々な症状が出る、ということは知っておくと良いかもしれません。痛みへの理解が深まり、痛みに対する恐怖感が和らぐかもしれません。(^^)/

〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.
沖田実,松原貴子:ペインリハビリテーション入門,三輪書店.2019.

 

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