【痛みは脳が決めている、この究極的な原因は自分で治すしかない】痛みのしくみ②

記事【痛みを自分で治すために知るべき3つの原因と根本的なメカニズム】痛みのしくみ①で、「基本的には、身体が傷つき、それを脳が感じることで、痛みが出ます」とお話ししました。この言葉のように、痛みのメカニズムは、とてもシンプルなのです。

ただ、このメカニズムの中で、股関節、腰、膝の長引く痛みに悩まされている多くの方が、ほとんど認識していない、とても重要なことがあります。痛みの原因の根幹に関わることです。長引く痛みを治すために、必須のものです。それは何でしょうか??

それは、「脳が感じることで、痛みが出ます」という部分です。このことを理解していれば、長引く痛みは自分で治すしかないという結論に、至るはずです。

痛みの定義

国際疼痛学会(IASP:International Association for the Study of Pain)という組織があります。この学会は、痛みの治療や研究に関して国際的な活動を行っている、世界的なリーディング学会です。

1979年の定義

この学会は1979年に、痛みを次のように定義しました。

痛みは、実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはこのような損傷を表す言葉を使って述べられる、不快な感覚、情動体験である

原文は以下になります。

An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage

この定義の要点は、「痛みは、不快な感覚、情動体験である」ということです。

2020年の定義

国際疼痛学会は、2020年7月16日に、痛みの定義を41年ぶりに改訂しました。そして、その定義の主文中に記しきれない6項目を付記として加えました。それらの内容は、次の通りです。

痛みは、実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験

  • 痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。
  • 痛みと侵害受容は異なる現象です。感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。
  • 個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。
  • 痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきです。
  • 痛みは、通常、適応的な役割を果たしますが、その一方で、身体機能や社会的および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあります。
  • 言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎません。コミュニケーションが不可能であることは、ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではありません。

 

原文は以下になります。

An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage

  • Pain is always a personal experience that is influenced to varying degrees by biological, psychological, and social factors.
  • Pain and nociception are different phenomena. Pain cannot be inferred solely from activity in sensory neurons.
  • Through their life experiences, individuals learn the concept of pain.
  • A person’s report of an experience as pain should be respected.
  • Although pain usually serves an adaptive role, it may have adverse effects on function and social and psychological well-being.
  • Verbal description is only one of several behaviors to express pain inability to communicate does not negate the possibility that a human or a nonhuman animal experiences pain.

 

痛みの定義の日本語訳を作成したのは、国際疼痛学会の日本支部である日本疼痛学会ですが、この学会は今回の改定の背景について、次のように伝えています。

現在まで使われてきた旧IASPの痛みの定義(1979年作成)は、痛みの医療者や研究者のみならず、国やWHOなどにも認められてきました。

しかし、科学分野を含めて、広い意味での痛みの理解の進歩が進んだことを受けて、定義自体の再評価・改定の必要性が指摘され、2018 年から改定に向けたIASPのPain Definition Task Force(座長:Srinivasa Raja 教授(Johns Hopkins 大学)、日本からはメンバーとして牛田委員が参画)が構成されました。

2年間に及ぶ改定作業では、広くパブリックコメントを求めたり、哲学者などの意見も取り入れるなどが行われ、上記の新定義が確定しました。

旧定義で特に問題となったのは、それが“多様な心と身体の相互作用について重んじていないこと”や、倫理的な面から痛みを表現できない新生児や高齢者やヒト以外の生物などの問題が無視されているという点です。

また、新しい定義が、神経障害性疼痛やNociplastic Pain(侵害可塑性疼痛)などの概念をも包括すること、わかりやすい言葉であることなども重視されました。

この新しい定義でも要点はやはり、「痛みは、感覚かつ情動の不快な体験」ということです。これこそ、まさに、痛みの本質を表現した言葉だと思います。では、この「感覚かつ情動の不快な体験」は、どこで起こっているのでしょうか?

痛みを感じているところ

「感覚かつ情動の不快な体験」が起こっているところ、それは、「」です。つまり、痛みは、脳の中で起こっている、ということなのです。

私たちは、痛みを、ただただ脳で感じているのです。傷めた股関節、腰、膝などで、痛みを感じているわけではないのです。

もっと言うと、脳が「痛い」と感じさえすれば痛みが出るので、痛みのあるなしと、股関節、腰、膝などを実際に傷めているかどうかは、全く関係ないのです。このことを証明する、よくある現象をご紹介します。

1.「頭が痛い」と感じて病院であらゆる検査を受けても、どこにも異常が見つからない
  ⇒痛みはあるが、異常はない

2.サッカーの試合中に、実は足を骨折していたのにも関わらず、試合が終わるまで痛みを感じずにプレーをしていた
  ⇒異常はあるが、痛みはない

このように、痛みの有無と、異常の有無は、関係ないのです。もっと極端な例を挙げると、幻肢痛というものがあります。これは次のような現象です。

3.事故などで腕を失った人が、ないはずの腕に痛みを感じる
  ⇒腕がないのに「腕が痛い」と感じている

このようなことから、痛いか痛くないかは、脳が決めている、ということが分かります。つまり、痛みの究極的な原因は「脳」にあるのです!!

ドクターショッピング

「痛みは脳が決めている」ということをしっかり認識していないと、次のようになってしまいます。

  • いくら病院に行っても痛みがちっとも治らない。あの先生は、やぶ医者だ!」
  • 「ずっと施術をしてもらってるけど良くならない。あの先生の施術は全く効果がない!
  • この痛みは一生続くんだ・・・もう死んだ方がましだ・・・

 

痛みの原因が脳にあったとしたら、いくら股関節、腰、膝などの治療や施術を受けても、全く見当違いのことをされているので、痛みが治らないのは当然のことでもあります。

長引く痛みに悩み苦しんでいる方もそうですが、医療従事者もセラピストも、ほとんどの人が「痛みは脳が決めている」ということを認識していなかったり、軽視していたりします。

そのため、どのような治療を受けても治っていかないので、結果的に、様々な病院や治療院を渡り歩く、いわゆるドクターショッピングをすることになってしまうのです。

痛みは自分で治すしかない

痛みは脳が決めています。痛みの究極的な原因は脳にあります。このことを知っていると、痛み治療に対する視点が変わります。痛みへのアプローチ方法がもう一段高くなり、痛みがより治りやすくなります。

いや、治りやすくなると言うより、「痛みは脳が決めている」という認識がないと治っていかないと言っても、過言ではないと思います。

そして、脳で何をどう感じるかは、自分しだいです。したがって、痛みを治すことができるのは、脳での感じ方をコントロールしている自分しかいない、ということなのです!

最速最短で長引く痛みを治したいのであれば、この認識は絶対に持っていて下さい。

繰り返しますが、痛みは、傷めた股関節、腰、膝などで感じているのではありません。脳で感じているのです。痛いか痛くないかは、全て「脳」が決めているのです!!

脳の中の痛みの治し方や、詳しいメカニズムは、記事【脳の中の痛みの治し方、慢性腰痛VS関節痛】痛みのしくみ⑱でお話ししています。是非ご覧下さいね。(^^)/

 

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